03.井中贋作工房
「その石を心臓にするんですか?」
「そうだよ、いいものが取れた。綺麗だろう?」
「別に。どちらも紅いのね」
「ああ、今はそう見えるかな。ま、順当だろ?魔女の色だからね」
「魂の象徴…私の中にもこのようなものが入ってるんですよね」
「入ってるね」
「それは…どんな石?」
「うん…ふふふ、秘密」
掲(かか)げた青い洋燈(ひ)を頼りに
井戸の底を覗けば
割れた鏡の欠片が映し出す
願望(のぞみ)が揺らめく
弄(まさぐ)る指 走る痛みは実在(じつざい)を悟る至福(しふく)
掬う掌(て)を切り裂く程愛おしく
在りし姿欲しくなる
目隠し鬼手の鳴る方へ
足元に並ぶ古札(カード)
踏み躙(にじ)り何も知らず出鱈目(でたらめ)に
乱すが順路(さだめ)
散らばる意味を元の通り
並べ直し読み解けば
失う前遣(や)り直し 目を開けて さあ
御足下に気を付けて
組み上げて磨き上げて
呪文(ことば)の糸で繋ぎ合わせ
歯車融け合って駆け廻(まわ)れ
魂(こころ)を呼び戻せ
水面(みなも)に沈んだ眠れる物語(ほうせき)達
欠け落ち忘れられて
いつか混沌(どろ)に朽ちる時を待つ屍(しかばね)
息絶えた跡を野薔薇(のばら)が飾る様に
存在(いのち)の証を汲(く)み上げ今一度其の名を…
取り戻せ 世界に刻め
弔(とむら)いの花も朽ちて只(ただ)黒く
密かなる葬儀(わかれ) 君は今何処(いずこ)
「変な顔。鼻も低いし、全然可愛くないわ」
「こら、ナイト」
「これで当時17歳?てんでガキ臭いったらありゃしない。私より年下みたい、ブサイク」
「おいおい」
「こっちの髪は赤すぎる、下品な色、まるでリコリスみたい。おまけに色黒…」
「ナイチンゲール、いい加減にしろ!お前いつからそんな行儀の悪い子になったんだ?」
「だって、イド様馬鹿、お父さんには…」
「何怒ってるんだ?」
屍鑞の唇(くちびる)に紅薔薇(くれない)の呪歌(うた)を
硝子(ガラス)の眼球(まなこ)に星屑を焼(く)ベて
贋作(まがいもの)と真作(オリジナル)の越えられぬ境界(かべ)を
今束の間眩(めくら)ませ鏡に映し盗(と)れ
…望む儘(まま)に
月光(つきあかり)滴り血潮(ちしお)と成れ
柩を釘付(くぎづ)けた茨(いばら)に囁く
“お役目終わりさご苦労様(さよなら)”
永劫(えいごう)の檻で眠れる対(つい)の魔女(おとめ)
此の手で抱き上げ掬い上げ
業(ごう)深き其の名を…
思い出せ 世界に還れ
早すぎた埋葬(ねむり) 断絶(だんぜつ)の《三番目の紅月》(せかい)
歴史の狭間の歪(いびつ)なる墓石(ぼせき)
忘却(ぼうきゃく)を暴(あば)き 理(ことわり)を侵し 再生(さいせい)を騙る
…《井中贋作工房》(せいじゅうがんさくこうぼう)
「ママの馬鹿!」
- 专辑:アーキタイプの井戸の怪物
- 歌手:Krik/Krak
- 歌曲:井中贋作工房