うちに赤紙が届いて 「喜べ」と言った父上 白い骨だけ帰って来た 娯楽も知らぬまま死んだ 貴方が「下らぬ」と言った 場末の歌劇団に入り 私は今や舞踊界のナンバーワン 袴から覗く上品な脚も 竹のよに真っ直ぐな背も どれも貴方から受け継いだX染色体 被害者ヅラして生きてくなど 到底できない性分で 今日も舞うのです 喝采の中 狂ったように 向かいの公爵夫人の 旦那様も戦死なさって ヒステリックな大正琴の音 止むこともなく聴こえて来ます 青い目をした軍人が 何気なくくれたキャラメルは 罪なほど甘い宿敵の味