かつて私は夏の蒸せかえる様な草の匂いを 胸一杯に吸い込んで走り回る 至極ありふれた夢見がちな少年だった 突如として雲の切れ間から現れた 飛行船に心を奪われ 空を飛ぶことへの憧憬を その後10年以上もの間こじらせる程の ありふれた愚かな少年だった 全身全霊使って 時速一つの諦めで 私は年をとっていく 永遠とはいかないが 名前をつけた この飛行船に乗って 世間一般でいうところの大人になった 行ってみたい場所はどんどん増えていった 360°パノラマの地平線 夕陽と混ざり合うターコイズブルーの海 湿原と